みどころ
highlights

北斎の代表作としては、“Great Wave”と称されて世界的に名高い「神奈川沖浪裏」を含む「冨嶽三十六景」シリーズ、19世紀のヨーロッパにおけるジャポニスムの流行の契機となった『北斎漫画』などが一般的に知られていますが、これらは約70年に及ぶ北斎の画業のほんの一端にすぎません。
本展では、北斎の絵師人生を作風の変遷と主に用いた画号によって6期に分けて紹介します。勝川派の絵師として活動した春朗期(20〜35歳頃)、勝川派を離れて肉筆画や狂歌絵本の挿絵といった新たな分野に意欲的に取り組んだ宗理期(36〜46歳頃)、読本の挿絵に傾注した葛飾北斎期(46〜50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた戴斗期(51〜60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した為一期(61〜74歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した画狂老人卍期(75〜90歳頃)と、その壮大な画業を通覧。国内外の名品、近年発見された作品、初公開作品を通じて、真の北斎に迫ります。

01待望の大規模北斎展

《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》大判 天保初期(1830-34)頃
島根県立美術館(新庄コレクション)
展示期間:2月21日(木)〜3月24日(日)
※1月17日 (木) ~ 2月18日 (月) は日本浮世絵博物館の作品を展示

20歳のデビュー作から90歳の絶筆まで、本展に出品される作品数は約480件(会期中展示替えあり)。十数年ぶりに東京で開催される、大規模かつ網羅的な北斎展となります。国内外から集められた名品・貴重品によって、北斎の全貌を知ることのできる待望の機会です。

02初公開作品が続々登場!

《かな手本忠臣蔵》左上:二段、右上:五段、左下:十一段、右下:十一段 小判10枚
文化初-中期(1804-1813)頃 シンシナティ美術館
Cincinnati Art Museum, Annual Membership Purchase Fund, 1909.23-1909.32
通期展示

多数の初公開作品を揃えていることも本展の特徴です。アメリカ・シンシナティ美術館が所蔵する「向日葵図」(肉筆画)は、北斎が88歳の時に描いたものですが、その凛とした姿には、衰えを知らない北斎のエネルギーがみなぎっています。また同館の「かな手本忠臣蔵」(小判、10枚)は近年発見された貴重なものです。旧津和野藩主家が所蔵していた摺物(非売品の特製版画)、大小暦も必見。118点を4期にわけて全点を公開しますが、いずれも長らく秘蔵されていたため、衝撃的なほどに美しい色彩をとどめています。

03永田コレクション、最後の東京公開

《牡丹に蝶》大判
天保初期(1830-34)頃 島根県立美術館(永田コレクション)
展示期間:1月30日(水)〜2月18日(月)

本展監修者・永田生慈氏は北斎研究のために作品の収集も行いました。作品数は2000件を超えます。それらは2017年に一括して、故郷の島根県に寄贈されました。そして氏の遺志により、本展に出品された後は、島根県のみで公開されることとなりました。つまり、本展は永田コレクションを東京で見ることができる最後の機会となります。

永田生慈氏略歴

永田生慈氏は1951年、島根県津和野町生まれ。幼少の頃に北斎の絵手本に魅了され、北斎研究を志しました。楢崎宗重氏の薫陶を受け、学究の道に入ります。1972年から2016年まで『北斎研究』の発行に携わりました。その間、国内はもとより海外の美術館やコレクターを訪ね、未知の北斎作品の発掘にも努めます。浮世絵を専門とする太田記念美術館の設立に携わり、同館副館長兼学芸部長を2008年まで勤め、1990年には出身地の津和野に葛飾北斎美術館を開きました(2015年閉館)。また研究とともに収集にも邁進しました。北斎と北斎派のコレクションは2000件を超えますが、研究者ならではの視点で集められた稀少な作品が数多く含まれるのが特徴です。2017年には、自身のコレクションを島根県立美術館に寄贈することを決意。さらに氏は、国内外で数多くの展覧会を企画・監修し、北斎の魅力を伝えることにも尽力。2005年の東京国立博物館、2011年のベルリン、2014年のパリでの北斎展などいずれも大きな反響を巻き起こしました。本展を半世紀にわたって北斎と歩んだ自らの集大成とすべく準備を進めてきましたが、2018年2月6日に逝去されました。